2020 Winter Term
LAW312 Legal Philosophy
法哲学
  Language of Instruction: J
  吉良 貴之 (KIRA, Takayuki)


CREDIT (単位): 3
Period(s)
時限数
Lec.(講義) Sem.(演習) Lab.(実験実習) Exe.(実技) Intensive(集中講義)
3         
General Description (概要)
Study basics of legal philosophy.

法哲学の基礎を学ぶ。


This lecture is an introduction to legal philosophy.

【ハイブリッド授業での注意点】
・予習復習が特に重要となるため、指定教科書の購入を必須とする(初回は不要)。
・受講者の希望によっては、オンラインのみの開催に切り替える可能性がある(初回に決定)。
・事前アンケートを行っているので、履修を考えている方はご記入ください。
 https://forms.gle/7AAzKQnPWAyNkCAu8

【授業内容】
 「法哲学」の入門的な講義を行う。英米の現代的な議論を中心に、各種の立場を踏まえ、下記の内容に記してあるような具体的論点に即して法哲学的思考を身に付ける。法律や裁判例の具体的な知識は前提としないので、法・政治メジャー以外にも、社会問題について変わった角度から考え、議論に参加してみたいと思う者の履修を歓迎したい(毎年、理系メジャーも含め、多様な履修者がいる。学年も問わない)。なお、政治哲学や倫理学関係科目と一部、テーマが重なるが、この授業は最終的に「法」のあり方の解明を目指すので、切り口が異なる。(使用言語 J/E)


 
Associated abilities in the ICU Diploma Policy / 関係するICUディプロマ・ポリシー上の能力

 
Learning Goals(学習目標)
The purpose of this lecture is to learn and improve legal (philosophical) reasoning skills, through the various topics as below, mainly based on contemporary English legal and political theories.

 さまざまな法・政治哲学的立場の発想をふまえたうえで、自分なりに整合的と考える正義論・法概念論の立場から、各種の具体的問題について見解を述べられるようになること。また、実定法および政治学関係科目ほかでの論点にもその思考方法を応用できるようになること。

 
Contents(内容)
1. Introduction and practice of legal Philosophy
2. Justice (1) : John Rawls and his critics
3. Justice (2) : Global and Intergenerational Justice
4. Right : Interest and Intent (Choice) Theories
5. Freedom : Negative and Positive Meaning
6. Democracy and Public Goods
7. Concepts of Law (1) : Kelsen
8. Concepts of Law (2) : Hart, Dworkin, Raz
9. Discussion

Notes: In this lecture, discussion is mainly held in Japanese. But we often compare the meanings of legal and philosophical words in Japanese and English. The reading assignments are almost written in Japanese, but sometimes include English literature. Grading is based on the final report (either in Japanese or English).

1. 法哲学を学ぶ意義
 現代法哲学の議論状況を概観し、最近の判例などを素材に法哲学的思考を「実践」してみることで、法を哲学的・原理的に吟味する意義を理解する。

2. 正義 (1): ロールズとその批判者たち
 ロールズ以降の正義論について、各種の立場を理解する。
 【内容】 リベラリズム、リバタリアニズム、功利主義、共同体論、各種の平等論
 【問い】 あなたが最も魅力的だと思う正義論上の立場は何ですか?

3. 正義 (2): 世界正義と世代間正義
 現実的な社会問題における正義のあり方を考え、第2回で扱った各種の正義論上の立場の妥当性を吟味する。
 【内容】 グローバルな正義、世代間の正義、科学技術倫理、戦争責任論、死刑の是非
 【問い】 第2回で扱った各種の立場からはそれぞれ、現実の社会問題についてどのようなことがいえますか?

4. 自由
 「自由」について、各種の法・政治哲学的立場から概念の整理を行う。たとえば「ある行為ができる」という「可能」と「自由」はどう違うか、といった論点について考えを深める。
 【内容】 積極的/消極的自由、「割れ窓理論」など新しい刑事政策論、ダンス規制
 【問い】 「自由」が望ましいとすれば、それは「なぜ」? また、たとえば犯罪者にGPS装着を義務付けるといったことは許容されますか?

5. 権利
 「権利」について、各種の法/政治哲学的立場から概念整理を行い、正義論と法概念論の結びつきについて理解を深める。
 【内容】 利益説・意思説、将来世代の権利、動物の権利
 【問い】 将来世代や動物に「権利」があるといえますか? それは誰にどのような義務を課しますか?

6. 民主主義と公共的価値
 法が実現すべき「価値」は客観的・合理的に語りうるものか、またその実現・保障のあり方はどうあるべきかといった問題について理解を深める。
 【内容】 熟議、正統性、立憲主義、改憲問題、裁判員裁判
 【問い】 社会的に望ましい「価値」とはどのようなものであり、またその実現のために「民主主義」はよい仕組みといえますか? また、そこでの裁判所の役割はどういうものですか? 「裁判員裁判」は両者を補うものといえますか?

7. 法概念論 (1) ケルゼン
 法実証主義論争の「前史」としての19世紀ドイツ法思想史を概観したうえで、ケルゼンの法理論が何を目指していたのかを理解する。
 【内容】 歴史法学、法典論争、生ける法、法段階説、リアリズム法学
 【問い】 19世紀ドイツの法典論争~法学革新運動を踏まえると、ケルゼン理論の意義はどのような点に見出だせますか? また、彼の「法学の科学化」「イデオロギー批判」といったモチーフは現代でも意義があるといえますか?

8. 法概念論 (2) ハート、ドゥオーキン、ラズ
 ハート『法の概念』以降の英米の法実証主義論争がどういった点をめぐって対立しているのか、この講義全体のまとめとなるように理解する。
 【内容】 ハート・ドゥオーキン論争、インテグリティとしての法、権威としての法
 【問い】 ハート、ドゥオーキン、ラズなどの論者は法のどのような面を強調しているといえますか? また、各種の見解を踏まえると、「遵法義務の有無」「悪法も法か?」といった問題にどのようなアプローチができますか?

9. まとめ・ディスカッション
 各種のアクチュアルな問題を考察していくなかでこれまでの議論の実践的意義をまとめ直す。ゲスト講師招聘予定。

 
Language of Instruction(教授言語の詳細)
Lecture: Mainly Japanese
Readings/Materials: Mainly Japanese
Tests/Quizzes/Assignments: Mainly Japanese, but some reading assignments are in English.
Discussions/Presentations/Other learning activities: Mainly Japanese
Final Report: Both Japanese and English
Communication with the instructor: Mainly Japanese, English is allowed.

・講義やディスカッションは基本的に日本語で行います。ただし、英米圏の議論との比較をつねに念頭に置きます。
・課題文献等の多くは日本語のものを指定しますが、一部、英語文献を指定する場合もあります。
・期末レポートは日本語でも英語でもかまいません。

 
Grading Policy(成績評価基準)
・期末レポートによって評価する。講義を踏まえたうえでテーマを設定し、自分なりに整合的と考える法・政治哲学的立場から一貫した論述ができるかどうかを問う。
・講義中のディスカッションに積極的に参加した者については加点を行う。
・3分の2以上の出席を単位取得要件とする。

 
Expected study hour outside class(授業時間外学習)
210 minutes per week.

 
References(参考文献)
・教科書は、瀧川裕英・宇佐美誠・大屋雄裕『法哲学』(有斐閣、2014年)。毎回、該当範囲を指定する(初回は指定しないが、全体をざっと眺めておいてほしい)。授業内容は教科書の単なる解説ではなく、教科書の内容を踏まえた批判的・応用的内容が主体となる(もちろん、教科書の難しい部分は適宜、解説を入れる)。

・法哲学・政治理論や実定法上の知識は特に前提とせず、初学者に配慮した講義とする。ただし、まったく初めてという受講生はできるだけ、以下のような入門文献を読んでおいてもらえるとよい。また、「法学入門」「憲法」などの授業を履修した者は、内容をよく復習しておいてほしい。
 マイケル・サンデル『これからの〈正義〉の話をしよう』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫、2011年)
 神島裕子『正義とは何か』(中公新書、2018年)
 住吉雅美『あぶない法哲学』(講談社現代新書、2020年)

・ほか、講義全体にかかわる参考文献として、以下など。
 中山竜一『二十世紀の法思想』(岩波書店、2000年):「法とは何か」という法概念論を中心にした概説書。正義論への言及もあり。
 森村進『現代法哲学講義』(筑摩選書、2015年):法概念論中心の概説書。中山著よりも自説を強く出すスタイル。
 滝川裕英編『問いかける法哲学』(法律文化社、2016年):具体的なトピックから考えるもの。レポートの参考になる。
 W・キムリッカ『現代政治理論(新版)』(日本経済評論社、2005年):現代英米圏の政治哲学の代表的な概説書。やや高度。

・その他の参考文献は講義中に適宜、紹介する。
・毎回、一定の課題文献(英語論文も含む)を指定するので、よく予習することが望ましい。

 
Learning Support Resources for Students (学生のための学修支援リソース)
If there are learning support resources that are especially recommended for this course, they will be listed below.
Here (ICU Internal page) is the list of learning support resources available at ICU.
このコースで特に利用を推奨する学修支援リソースがある場合、以下に記載されます。
ICUで利用可能なリソースの一覧はこちらです(学内ウェブサイト)

 
Notes(注意事項)
・講義とディスカッションは基本的に日本語で行う。
・ただし、毎回の reading assignment には必要に応じて英語文献を指定する場合もある。
・法律や判例などの知識は前提としないので、法・政治メジャー以外の学生も積極的に受講してほしい。各種の社会問題について、普段とは変わった角度から考えてみたいと思う者であればメジャーを問わず歓迎する。
・ディスカッションを重視するので、積極的な参加が望ましい。単位取得にあたって必須とはしないが、議論するのは何より楽しいと思う。
・各自の問題関心を発表(プレゼン)してもらい、全体で議論することも有益と思われるので、積極的な立候補を望みたい。
・参加者の興味関心に応じて、講義内容は柔軟に変更する。
・講義にあたっては、外部講師の招聘、映像素材の使用などを適宜検討する。
・質問等は講義の前後、およびメールで受け付けるので、遠慮なく行ってほしい。
・吉良のホームページには、連絡事項や配布資料を掲載するので、積極的に活用してほしい。なお、重要な連絡事項は必ず、ポータルサイト等で確認すること。
・単位取得要件とは関係しないが、発展的内容を扱う自主ゼミナールの実施も検討する。

 
Schedule(スケジュール)
5/F,6/F,7/F

 
URL
http://jj57010.web.fc2.com/

 
ICU Policy on Academic Integrity / 学問的倫理基準に関する本学の方針 (レポートや論文執筆における留意事項)